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1952 チューリング「反応拡散系」 → 生命的パターンを生成 1966 ノイマン「自己増殖オートマトン」 → 自己増殖
1930s 「一般システム理論」:生命をシステムとして捉える *1
1944 シュレディンガー『生命とは何か』:生命システムはエントロピーの高い環境と相互作用しながらも、自己の内部のエントロピーは低く維持する。つまり、生命とは秩序を定常的に維持するもの。*2
ハインツ・フォン・フェルスター:生命や意識のもつ自己言及性に注目し、ラディカル構成主義という、万物が共時的に構成されること
1970s フランシスコ・マトゥラーナ 「Auto Poiesis」:自らの構成要素を自律的に産出出来る構造
→ ヴァレラ:Substrate Catalyst Link
「Cybernetic Loop」:人間と機械を一つの複合系として見なし、内外情報のFeedbackループ構造
2 生命のパターンを作る
「自己組織化」
Gray-Scott モデル
- U 一定補充率で追加
- V 一定減量率で消滅
- 拡散 (ラプラシアンで自位置の濃度を増減する)
- 反応 U + 2V → 3V
セルラー・オートマトン
遷移ルールを数で記述できる。例えば一次元の場合、
000 → 0 001 → 1 010 → 1 ... 111 → 0
というルールを、0b011...0 で記述できる。全部で256通りのルールがある。
右側の0と1の比をλとし、0.3 くらいの時に複雑度が一番高い(非周期だが完全カオスでもない)。
現実世界の計算
ノイズに頑強
トンプソン:FPGAで進化するるハードウェアを研究
3 個と自己複製
インターネットに拡張された自己、遺伝子が規定する自己
「個の創発」は「Auto Poiesis」の基本問題
内と外(環境)を隔てつつ、開く。例えば細胞の膜。安定性と不安定性の間にあり、環境変化に適応できるぐらいの不安定性を持つ。(
SCL モデル
Substrate 基質分子 Catalyst 触媒分子 Link 膜分子
- 2S + C → L + C (触媒によって基質から膜を作る)
- L + L → L-L (バインドされる)(1個Lに2つ以上バインドしない、45度のバンドしないなど)
- L -> 2S (膜は確率で分解する)
- グリッド上、SとLは同じ位置に存在できる
- 分子はランダム移動(Cは低確率)(L-L移動しない)
結果、Cを囲む膜が作られる。
改良:Lの透過性とCの移動方法を設定し、感覚運動系を実現 *3
自己複製オートマトン
マシンとテープに分けて、任意のテープを複製可能、万能製造機。 ※Gollyというソフトで試せる
ノイズに激弱い。
Gray-Scott モデルの化学反応系
物質を3種にすることで、自己複製を実現。
自己記述テープがない → 自己情報は反応方程式にある → 進化できない → 結晶成長と同じ
実機の自己複製機
- ペンローズの Automatic Mechanical Self Replication (Youtube)
- ナサニエル、クリサンタ Evolvable physical self-replicators
自己複製と進化
ロバストじゃないと、存続しない;ロバストすぎると、生態系が窒息する。
進化において自己複製と多様性は相反する関係。
テープとマシン モデル
1つのマシンとテープの自己複製
- ノイズ小さい場合 → 自己複製がループ
- ノイズ大きい場合 → 他テープ作成され、よって他マシン作成される
→ 全体として安定したら、相互に複製する、集団「コアネットワーク」が進化される=ネットワークレベルの自己複製
→ ノイズに強い
自己を曖昧にして環境変化にロバストな全体に、「準種 quasi-species」
4 群れ
個体同士が強調しながら動作する時、集団の行動パターンや構造が創発される。
集団知、社会システムのコミュニケーション問題
Boids
1万匹以上のBoidsで新しい運動が見られる。
→ 適応度を上り詰めた後の平原で、多様性が一気に増す。
→ 「多段階創発」
ウェブサービスの集団知
一様な人が多く集まる領域に、新しいアディアが出やすい。*4
5 身体性
- Braitenberg's Vehicle
- Subsumption Architecture
身体と脳の共進化
Sims 「Evolving Virtual Creatures」1994
脳と身体の片方を進化させる研究はあるが、共進化でSimsを超える研究はまだない。
Soft robot
- CPPN-NEAT
- Octobot
6 個体の動きが進化する
進化アルゴリズムの元、ジョン・ホランド「Classifier」
RNNウイルスで人工進化実験 → 短くなり複製速度上がる
コンピュータの資源を複製プログラムが競い合うゲーム「CoreWars」
→ プログラム短くなり、複製速度上がる
サンプルコード:GA+NN で餌を食べるアリのモデル
7 相互作用
sketch-rnn と協働して絵を描いても、sketch-rnn に他者性、生命性を感じない。→相互作用がない。
Coupled Dynamical Recognizer(RNN2つで互いの行動を予測して行動)で囚人のジレンマを学習した結果、Tit for Tat 解に安定しない。
鬼ごっこで、交代で役割が半々になるように適応度を設定、GA、RNN *5
→ 進化が進むと周期的な行動パターンから複雑になっていく
→ 交代に至るための不安定性と、追いかけっこするための安定性のバランス
→ 相手の動きに敏感
片方に録画した軌跡を再現させると、交代が破綻する
→ 相互作用が重要
相互作用を行うことは、相手を客観的に捉えるというよりも、両者関係の中で捉えること。「間主観性」
他者性
相互作用は単なるやり取りではない、 人と人との相互作用は共創的、思わぬ面白いことが埋まっている。
「知覚交差実験」仮想空間でリモートで指に振動送られると、他者の実在性を感じる。
→ 単なる刺激を受けただけでなく、期待が形成されている場合、受動的なタッチが大事
鬼ごっこで、相手の行動に期待が生まれ、存在を感じる。
アリ集団
蒸発する匂いを残す設定。
→ デッドループが形成されても、時間経つと、ループを壊す行動が現れる。(飽きる)
→ 個体行動のうらぎ → 集団を作るし、それを壊しもする → 安定性と不安定性の共存
8 意識
意識のボトルネック
意識して何かやろうとする0.5秒前に、すでに必要な脳の活動ができている。 readiness potential
皮膚への刺激を、脳の皮膚への直接刺激よりも先に知覚する (postdiction) → 主観的時間、伝達の遅れをカバーして整合性を見せるように制御されている
ロボットへの実装ーーロボットに主観時間必要か?
昆虫は並列処理、意思を載せるのは難しい→意識がないと思われる。
意識は直列的な時間の流れを伴ったもの、postdictionが必要となる。
直列的な意思決定は遅い、6章のRNAの例の進化方向に反する。 実際冗長な遺伝子も多い。
→ 脳の創造性は、非効率的な脳の冗長性から生み出されるように思える。
【感想】集団をなして、centerized 制御で複雑なことを成せるでは? と考えると、集団の安定性と不安定性は、低次の効率と高次の適応力?の動的バランス調整ではないかな
ALife で考える生命の本質とは、学習のゆらぎや進化における変異こそが、個体性を生み出すことだといえます。
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記憶したもんとと今・ここで体験する現実像との差異が(中略)フィードバックをかけることで生まれる情動や、動機づけ、未来予測と、他者への思い、そこにこそ意識の創発が見え隠れすると考えてみます。意識は、そういうフィードバックの中で生まれる要求であり、情動、感情の発露かもしれない。
未来行為による多様性(エントロピー)を増やす方向に行為を選択するモデル:
- Wissner-Gross, Causal Entropic Forces
- Jan T. Kim, Exploring Empowerment as a Basis for Quantifying Sustainability
*1:『一般システム理論 その基礎・発展・応用』Bertalanffy
*2:『生命とは何か 物理学者のみた生細胞』
*3:Keisuke Suzuki and Takashi Ikegami, Shapes and Self-movements in Autopoietic Cell Systems, Artificial Life, vol.15, no.1, p.59-70, 2009
*4:Takashi Ikegami, Life as an emergent phenomenon: studies from a large-scale boid simulation and webdata
*5:Takashi Ikegami, Turn-taking Interaction as a Cooperative and Co-creative Process, Infant Behavior and Development